Sensing & Design Lab.

慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科
センシング・デザインラボ(神武研究室)

Keio Meet the Future Project(KITE Project) SENSING & DESIGN LAB. SPECIAL SITE 神武研から理解するSDMとその社会活用

Sensing & Design Lab.

Keio Meet the Future Project(KITE Project) SENSING & DESIGN LAB. SPECIAL SITE 神武研から理解するSDMとその社会活用

プロジェクト名称

ジュニアドクター育成塾「KEIO WIZARD」

KEIO Wellbeing Integrated Wizard Training Program for Elementary and Junior High School Students

概要

理数、情報分野、医療、宇宙などに関心・興味のある意欲あふれる児童生徒を対象とした教育プログラムとして、ジュニアドクター育成塾「KEIO WIZARD」を2018年より開講。本研究室がそのプログラム設計と運営を担う。一流の研究者による特別講義でビックデータ、AI、生命、宇宙などの最新トピックに触れながら、ワークショップやフィールドワークを通じて身近な疑問や興味から生まれる科学への好奇心に目を向け、それを課題として科学の力で解決法をデザインしていくための研究教育プログラムを開発している。ベーシックとアドバンスドの2つのコースを設け、受講生は課題発見からアイデア創出、探求、成果発表といった研究プロセスを学ぶ。

実施地域

慶應義塾大学「殿町タウンキャンパス」

研究背景/目的

科学技術の進歩と社会構造の複雑化により、イノベーション創出のためには⼀つの研究・技術領域を狭く深く追求するスタイルから、⾃然科学だけでなく、社会科学あるいは⼈⽂科学的な要素までを包含して新たな価値創造を試みる研究スタイルが求められるようになってきています。学校教育においては、対応しきれない個に応じた学習による才能の伸長も重要視され、科学技術イノベーションを担う多様な人材の育成が急務となっています。
このような動きの中で推進されている次世代人材育成事業のひとつが、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)が後援する「ジュニアドクター育成塾」です。将来の科学技術イノベーションを牽引する人材の育成に向けて、理数・情報分野の学習等を通じて高い意欲や突出した能力を有する小中学生を発掘し、その能力を伸長させる体系的な取り組みを支援する教育プログラムであり、全国で約30の教育機関が採択されています。

学校法人慶應義塾は採択機関として内部の複数機関が横断的に実施体制を組み、2018年度より5カ年にわたるジュニアドクター育成塾「KEIO WIZARD」を開講しており、本研究室がそのプログラム設計と運営を担っています。本プログラムでは、日々接する身近な人や出来事に目を向け、*ウェルビーイングを実現するための課題を見つけ出して、それを題材として科学技術による解決法をデザインし実践できるジュニアドクターの定常的な育成・輩出を目指すことをビジョンとして掲げており、具体的な問題解決を目的としつつ、基礎原理の追及もするパスツール型(根本原理を追及しつつ、用途を考慮する研究者)の人材を育成・輩出する仕組みの構築を目指しています。

研究方法

システムデザイン手法を導入し、高い意欲・能力を有する受講生をさらに伸ばしていく

公私立出身校を問わない小学5年生から中学3年生の受講生を対象に、システム思考とデザイン思考を取り入れた研究教育プログラムを実施しています。基本的な方略として、一流の研究者による最先端研究についての特別講義を通じたインプット、課題発見から現状分析、アイデア創出、成果発表までをサポートするワークショップから得られる研究プロセスの体感、興味喚起から行動移行にいたる各フェーズごとの受講生の成長に沿ったシステムデザイン手法の導入が挙げられます。また学びを深める支援として、専門性を有する社会人メンターや慶應の学生メンターによる指導や家庭で取り組める自由課題等を取り入れています。

一連の研究教育プログラムは、次世代の社会を切り開く⼈材に必要な*STEM教育、そして異なった視点や考え⽅をもつ仲間達とコミュニケーションをとり⾃らの発想を熟成させイノベーションに繋げることができる⼈材の育成を⽬的としたイノベーション・コミュニケーション教育を念頭に開発し、実施しています。プログラムを通じて、受講生が広く社会に⽬を向けて的確に社会課題を捉え⾃らがチャレンジできる課題設定を行う能⼒を養っていきます。
システムデザイン手法を導入し、将来の科学技術イノベーションを牽引する担い手を継続的に発掘・育成
2段構えのプログラムの入り口となるベーシックコースでは、特別講義やワークショップを通じて興味・関心の幅を広げることを主たる目標とし、アドバンスドコースにおいては、ベーシックコースの受講生のなかから志願者を募り、選抜を行い決定する若干名を対象に、約8か月間にわたるプログラムを組んでいます。ひとつの研究テーマを深堀りして論理的にまとめる力を養い、その成果を他の人と共有しながら一連の研究プロセスを体得します。 これまで「植物は思考するか?」「色と味覚の科学」「入院中のQOLを高めるためには?」など身近な関心事から多様な研究テーマが生まれています。

(コロナ禍での運営に関しては、オンラインツールを活用したワークショップを取り入れるなどの工夫を施し、ハイブリッド形式にて開催しました)
ベーシックコースにおける学年縦断型5~6人編成チームで行うグループワークや「異人の眼」で行うフィールドワークの様子(2018年度活動より)
専門性を有するメンターのサポートを得ながら個々の研究テーマと向き合うアドバンスコースの様子(2019年度活動より)

研究成果/展望

次世代社会を切り拓くために必要不可欠な素養を身につけた人材へ

各年度4~50名規模の受講生を受入れ、第4期(2021年度)までに200名近いベーシックコース受講生を輩出しています。コース修了時における受講生の伸長を自己紹介動画発言分析等により考察した結果、思考や行動の変化が見られ、多視点で考える重要性やフィールドに出る大切さなど気づきや学びを得ていると同時に、自信向上にもつながっていることがうかがえました。
アドバンスコースに進んだ延べ20数名の受講生は、自身の研究を深堀りしていく過程で論理的思考力や自己表現力をさらに磨き、全国のジュニアドクター育成塾の受講生が集まってさらなるステップアップを目指す「サイエンスカンファレンス」での研究発表においても高評価を得ました。修了後もあらたな問いから研究テーマを導き出したり、具体化した将来の夢の実現に向けて行動する学生達の能動的な姿があり、彼らの今後の活躍が期待されます。

キーワード

ウェルビーイング

STEM教育

身体的、精神的、社会的に良好な状態である(Well-being)ことを意味する概念。
“Science, Technology, Engineering and Mathematics”の教育分野を総称する語。STEMに “Art”を加えたSTEAM教育の重要性も高まっている。

研究関連情報

<連携・協力機関>
慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター

協賛:
ミネベアミツミ株式会社
協力:
一般社団法人 ASG-Keio

<実施期間>
2018年度~2022年度 5カ年

<関連記事URL>
・国立研究開発法人 科学技術振興機構次世代人材育成事業「ジュニアドクター育成塾」
https://www.jst.go.jp/cpse/fsp/index.html

・慶應義塾大学ジュニアドクター育成塾
https://www.tonomachi-wb.jp/juniordoctor/

・これからの時代に求められる卓越した小・中学生を育てる!KEIO WIZARDとは(宙畑 2019年1月23日)
https://sorabatake.jp/3103/