SPEAKER INTERVIEW|スピーカーインタビュー

スピーカー

山本 純先生
第11回(🇺🇸アメリカ)
「記憶の不思議に迫り、慶應そしてMIT、UT Southwesternへ ~失敗を重ね、チャンスをつかむために私がしてきたこと〜」
山本 純先生
テキサス大学サウスウェスタン医学センター(UTSW)精神科・主任研究員/PI
インタビュアー:須賀智子(慶應SDM修士課程修了)

世界で様々な面白いことに取り組んでいる方と出会い、ワクワクする未来と出会うきっかけをつくるKITE Global Project。第11回のスピーカーは、20年以上にわたりアメリカを拠点に研究を続けられているヤマジュン先生こと、山本純先生です。ヤマジュン先生とモデレーターを務める神武直彦先生は、実は大学時代からの先輩・後輩の仲!30年近くに渡り親交を深めてこられた神武先生からも裏話が聞けるかもしれません。
今回、初めてお会いしてヤマジュン先生の大ファンになった、本プロジェクト運営メンバーの須賀がインタビューを行いました。

現在、ヤマジュン先生は、アメリカ南部のテキサス州ダラスにあるテキサス大学サウスウェスタン医学センターで、記憶学習や統合失調症、アルツハイマー病の研究に取り組まれています。記憶を思い出す瞬間はどうなっているのか?正しい記憶をどうやって読み出すのか?ー記憶のメカニズムを探るために脳の神経活動データを分析したり、「記憶」という切り口から、気分の落ち込みや幻覚・妄想など心身にさまざまな影響が出る病気、つまり精神疾患を早期に発見するための研究を行っています。たとえば、統合失調症は幻聴や幻覚に悩まされる病気ですが、その根本的な治療法はまだ見つかっていません。この病気に「記憶」の問題として立ち向かい、症状が出る前に病気を見つけることを目指して研究に力を注がれています。

小さいころから好奇心旺盛だったヤマジュン先生。授業やテスト勉強中に、なかなかものごとを覚えられない自分と他の生徒を比べて「なぜ、あの子はすぐに覚えられるのだろう?」と素朴な疑問を持ったことをきっかけに「記憶」について関心を持つようになったのだそうです。また、電気で動く機械にも興味津々でした。その構造が知りたくて、自宅にあったラジオやテレビを分解してしまったこともあるそう。触ってみたり、中をのぞいたりすることで「へぇー!」「こうなっているんだ!」を発見し、小さな実験を繰り返して「なぜ?」を突き詰めていく経験が、今の研究にもつながっているといいます。

やがて慶應義塾大学理工学部に進学したヤマジュン先生は、ロボティクスや人工知能の研究の道を歩み始めますが、大学院生のころに、人生を変えたというある論文に衝撃を受けて、専門を神経科学に転向することになります。その後、様々な出会いと不思議な縁が重なり、新たなチャンスが訪れたのが2001年。その論文を書いた研究者が在籍するアメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)への切符を手に入れるのです。その翌年からアメリカに渡ったヤマジュン先生は、この研究者、マット・ウィルソン博士とともに研究に取り組まれていた日本初のノーベル生理学・医学賞受賞者である利根川進博士のラボにあわせて10数年以上所属し、実績を積まれました。2017年にテキサスに移られてからも、複数の専門性を融合した研究アプローチを強みとして、主任研究員(PI)かつプロフェッサーとして活躍されています。

●航空宇宙少年でもあったヤマジュン先生。車やロケット、空飛ぶモノが大好き!KITE Projectに参加する小中学生の皆さんと一緒かもしれません!?
(写真:ヤマジュン先生提供)

●MIT時代の研究室の仲間とともに。世界各国で研究を続ける彼らとは今でも仲良くしているそう。
(写真:ヤマジュン先生提供)

ヤマジュン先生の、決して平たんではないこれまでの道のりを伺い、いくつかの転機に共通することがあると感じました。それは、自分を理解して応援してくれる人との出会いを次のステップを踏むための原動力にされたこと、そして、失敗を恐れずに「まずはやってみる!」の気持ちで挑戦し続けてこられたことです。悩みながらも、自分自身の熱意やユニークさを伝える工夫を重ねてこられた様子が印象的でした。

ウェビナーでは、これまでの歩みを面白いエピソードを織り交ぜながらご紹介いただきます。また描いている未来についてもお話いただきます。ヤマジュン先生のお話を聴くと、1歩踏み出したくなるのは、きっと私だけではないはずです。参加者の皆さんとの時間を楽しみにされているヤマジュン先生と一緒に、ワクワクするひとときを過ごしていただけたらと思います。どうぞお楽しみに!