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【11期】2019年度・春修士課程修了
SDM後期博士課程2年・助教(研究奨励)

大野 友

おおの ゆう

群馬県高崎市出身。大学入学までテニスにしか興味がなかったため、視野を広げるべく米国シアトルに留学。現地で薬物中毒やホームレス状態にある方を支援する活動に従事する中で、社会システムが問題を再生産する場を目の当たりにする。大学卒業後は宇宙分野でのスタートアップで研究調査業務にあたり、衛星データの活用で課題を解決する志を抱く。SDMに2018年に入学し、2020年に修了。現在はNPO法人イシュープラスデザインでパートタイム勤務する傍ら、データを活用した対話と協働の促進手法を博士課程で研究する。

研究タイトル【修士】

「社会事業継続性向上を目的としたオンライン上の信頼構築と動機形成による遊休資源活用支援システム」

研究の概要

近年、子ども食堂のような社会事業が地域住民を主体として実施されるケースが増えている。その運営には場所やスタッフなど様々な資源が必要になるが、現状ではそのような資源にアクセスできる地域の有志が中心となって実施しており、そうでない市民にとって開催のハードルが高い。そこで本研究では、シェアリングエコノミーの仕組みを活用して地域の遊休資源を可視化し、その実施を支援するシステムを設計し有用性を評価した。

SDM的ポイント

地域における住民主体の社会事業においては、人脈や情報を持つ一部の有志で行うことが多かった。宿泊場所や移動手段などで先行して普及しているシェアリングエコノミーの仕組みを社会活動に適用した点に本研究の新規性があるが、そのような状況で協力を誘発する情報の特徴や要件は明らかにされていなかった。本研究はこの問いに取り組み、地域における遊休資源シェアリングシステムの成立に必要な要件を明らかにした。

研究タイトル【博士】

「望ましい未来シナリオの構想を支援するデータ駆動型場のデザイン手法の設計と評価」

研究の概要

近年、COVID-19のような予測が極めて難しい事象の影響力が大きくなっている。そのため未来を予測するのではなく、実現したい姿を自ら描き、その実現に向けた取り組みを進めることの重要性が増している。この思考法は「バックキャスティング」とよばれ、SDGsの基本的な考え方としても知られている。地域づくりや組織ビジョン開発等の場でこの考え方は活用され始めているものの、望ましい未来シナリオを描きやすくするための知見は現状では蓄積が薄い。本研究では、参加者属性とテーマに関連する領域のデータ活用が未来シナリオ構想を再現可能にするという仮説を立て、データを活用した場のデザイン手法を設計し、その有用性を評価する。

SDM的ポイント

新型コロナウイルスや気候変動など、重要な社会課題を正しく理解するために、データの適切な活用が重要といえる。具体的にはデータの取得、分析、可視化、そしてそれを用いた話し合いの場をデザインするスキルが求められていると考えられる。しかし、現状ではそのような「データ駆動型ファシリテーション」を行うためのスキルセットが何であるか、またどのようなデータをどのタイミングで提示するのか等、既往の研究では明らかにされていない問いが多い。本研究ではこのような「データに基づく対話」を成功に導くための要件を整理し、その実施を支援するシステムを設計し、その有用性を評価する計画である。

慶應SDMで学んだことが
今の自分にどう役立っているか

慶應SDMでは、人生をプロジェクトの連続ととらえて、自らが責任をもってマネジメントし、成功に導くマインドセットとスキルを学びました。それが、現在の仕事やプライベートでとてもよく活きています。
現在の仕事では、社会課題に対する一般市民の意識と理解を向上させるための「体験型ゲーム」の開発と普及業務にあたっています。そのテーマはSDGs、地方創生、風水害と多様です。ゲームの体験会実施のため、地元である群馬県を拠点としながら、(感染状況に気を付けつつ)関東近郊の都県に足を延ばして対話を重ねる日々です。状況が極めて流動的に動いたり、予測が難しいことに影響を受けることも多々あります。その中で適切に情報を共有し、ゴールを掲げ、成功に向けて日々実践するためにSDMでの学びが日々活かされています。次は、大きな目標である博士号の取得に向けて、プロジェクトマネジメントを進めていきたいと思います。

近況報告

6歳から始めたテニスを最近再び始めました。神武研はテニスを含め、スポーツの研究をしている方が複数います。みなさんの研究発表を聞く度に、「自分が選手だった時にこのシステムを使えていたら、どれだけもっと強くなれたんだろう」と思います。選手だった時代は「競争99.9:楽しみ0.1」くらいでしたが、いまは「競争20:楽しみ80」くらいです。
仕事で「風水害24」という体験型防災シミュレーションゲームを広げる業務に取り組んでいます。気候変動の進展で大雨とそれに伴う洪水や土砂災害が常態化した社会で、実際のまちを模した仮想空間上で情報を取得して判断し、自らと住民の命を守ることをねらう体験型ゲームです。その体験会を2021年7月に群馬県で初めて開催し、ローカル紙の上毛新聞に掲載された時の記事です。感染状況を見極めつつ、オンラインも併用しながら、今後も開催を進めていく予定です。
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