Sensing & Design Lab. SPECIAL SITE

OB/OGのご紹介

【10期】2018年春修士過程修了

石田 幸央

いしだ ゆきお

信州大学工学部卒、医療機器メーカーに4年、インターネット企業に22年勤務後、慶應SDM在学時に独立。仕事のご縁をいただき、長野県の白馬村で、“あらゆるしくみでより良い未来を”作るシステムデザインとテクノロジーの企業「しくみ株式会社」を起業して地域に仕事と雇用をつくり、子どもたちへの学びの機会提供などを積極的に行なっている。コミュニティ&コワーキングスペースの「白馬ノルウェービレッジ」を拠点にして、施設運営や白馬村のふるさと納税業務の運用などITサポートを行い、最近は地域への学びの機会提供のため、コミュニティカレッジやPBLの学校を創設することを模索中。

研究タイトル

「スキーヤーを雪崩の危険から守る現地気象センサーを用いた弱層発生予測システムの設計と評価」

研究の概要

近年バックカントリースキーと呼ばれる自然の雪山を滑る人が増えており、それに伴って山スキーや山スノーボーダーの雪崩による死亡事故も増加している。雪崩には大きく分けると全層雪崩と表層雪崩の2種類があり、前者は斜面の見た目に予兆があるが、後者は外見上の観測ではそのリスクを推測することが難しい。表層雪崩では雪の結晶形状により弱層を形成し、風や雨、日照などの気象の変化が雪の板のスラブ(slab)を形成する。このスラブが弱層の上を滑ることで表層雪崩が発生する。弱層は積雪の内部構造のため、全容の把握は困難である。先行研究より、直近の現地の南岸低気圧通過時の気温上昇による弱層形成の条件と実際に雪崩が発生した弱層の整合は明らかになっている。また、現地での実地調査でも把握は可能だが、一方で専門知識と経験による合理的判断も必要で、現地に赴かないと判明できないという課題がある。本研究では、自らの判断で入山する山の熟達者や専門ガイドを対象に、現地の気象センサーを用いた弱層発生予測システムを設計し評価した。提案システムでは気象センサーからインターネットを介して特定のサーバーに配信されたデータを読み込み、気温が高まった際の弱層生成のタイミングを画像表示し実際の積雪の状況と比較して評価する。

SDM的ポイント

雪山、特にスキー場の管理外区域での活動に対してリスク要因である雪崩の予測をするという研究は海外では多くなされているが日本国内ではほとんど事例がなかった。本活動を行う者は確実にいて、それぞれの者が経験的に積み重ねてきた現象を自分のノウハウとして蓄積し外部に発表することがないため、これをデータを裏付けとして判定できるようになることには大きな意義があると考えた。人的環境的にコンテキストを把握し、全体システムを捉えて必要な要求を明らかにしたことに意義があると考える。

慶應SDMで学んだことが
今の自分にどう役立っているか

これまでに約30年間、特に業務を行う中で蓄積してきた暗黙知や経験上得た「状況の把握」とその先の「選択肢の提示」、「選択の方法と基準」をシステムズエンジニアリングの考え方、システム思考・デザイン思考の実践により、言語化、図式化できたことがとても大きな成果だった。今でもあらゆる状況をコンテキスト図として多次元的にイメージし、そこから最適な選択肢と創造的な方向性を選択し、示すことに大いに活かせている。

近況報告

2021サマースクール。観光立村白馬村の小中学生は親が接客に忙しくかまってくれないので、大学生と大人が夏休みの宿題を一緒に片付けるサマースクールを開催。自由時間には竹の水鉄砲や水車、アート作品などを作って遊んだ。
2021春先の雨飾山に山行。雪のソファを作ってコーヒーを淹れて至福の乾杯。山男の醍醐味です。
OB/OG 一覧にもどる