OB/OGのご紹介

【10期】2018年春修士課程修了
池田 美樹
いけだ みき
熊本大学仏語仏文コース卒業。マガジンハウスにて『Olive』『anan』『Hanako』『クロワッサン』等の女性誌の編集、ウェブメディア編集や読者モデルコミュニティの運営等を経験したのち、2017年に退職・独立。同時に慶應SDM修士課程に入学・修了。フリーランスのエディターとして新聞社の新規ウェブメディア編集、企業のオウンドメディア編集等に関わったのち、現在は外資系ビジネスSNS企業のニュース編集部にコンテンツ・エディターとして従事しながら文筆活動も行う。
研究タイトル
「中年期シングル女性のアイデンティティ再構築を目的とした自己編集ツールの設計と評価」
研究の概要
中年期はその特有の外的・心理的変化を契機に、自分の人生はこれで良かったのかと考え直すアイデンティティの問い直しが起こりやすい時期であるということが先行研究で明らかになっている。しかし従来の研究において女性は既婚・有子としてとらえられることが多い。そこで、本研究では中年期のシングル女性がジェネラティビティを獲得しアイデンティティを再構築するための方法を明らかにし、そのための自己編集ツール「じぶん編集シート」を設計、評価することを目的とした。
SDM的ポイント
本課題における先行研究は主に心理学領域、なかでも発達心理学において行われ、その心理的葛藤が起きることについて明らかにされてきたが、葛藤を乗り越える介入方法については研究されてこなかった。そこで本研究では特に有職・未婚・無子女性を対象に、アイデンティティ再構築の介入方法について再現可能なワークショップの形にして実施。効果を検証するところまでを行い、その有効可能性を提示した。
この研究への神武先生のコメント
本研究は、日本の生涯未婚率が増加しており、生涯子どもを持たない女性の割合が増加していくことに対し、中年期のシングル女性のアイデンティティ、そして、その適切な再構築に寄与することを目的として行われ、その成果が実際に活用されているという点で価値がある。成人女性というと既婚、そして有子として捉えられることが多いが、この研究では独身、無子の成人女性を主な対象とし、次の世代や社会のために積極的に役立とうとする「ジェネラティビティ」を獲得するための方法を明らかにし、そのための自己編集ツールを設計し、独身、無子の成人女性を対象に有効性の検証を行った。SDM研究科で学生が扱う研究は多様だが、その学生が研究課題を私事として捉え、いかにパッションを持って取り組めるかということが価値のある成果を出せるかというところに強く影響すると常に感じているが、この研究はまさに、本人が私事として捉えて強いパッションをもって推進したことが独自性のある成果を生み出すに至った大きな要因だと感じている。
慶應SDMで学んだことが
今の自分にどう役立っているか
実は「SDMで何を学んだか」と聞かれるとはっきりと答えることができない。「考え方を学んだ」とは説明するものの、その「考え方」についてうまく説明することができないのだ。しかし修了してしばらく経ってから、これはもしかしたらSDMで学んでいなければできなかった考え方なのではないか、と感じる。そしてそれが紛れもなく「俯瞰力」であることに気づくのだ。それは仕事、引いては自分の人生を概観するのに大いに役立っている。また、先生方と、同期、そして研究室で得たかけがえのない仲間達、先輩方。地方育ちで地方の大学を出て20年余、ようやく自分の暮らす東京に「大学院」という学校の恩師や仲間ができた。この人と人との関係を得たのが私にとってはとても大きかった。今では研究室とSDMが私のかけがえのない居場所である。特に神武研では特に、同じ時期に在籍していない縦のつながりも強い。いつでも誰かに何かを話したり相談したりできる環境は、これからも仕事をしながら生きていくうえでの大きな支えになってくれると確信している。
近況報告


